電源開発と他の電力会社との違いは?直近決算から事業内容を読み解く
2022年1月31日に電源開発(J-POWER)の第3四半期決算が発表されました。
昨年10月29日に公表された2022年3月期の通期業績予想を大幅に上方修正する内容でした。
具体的な内容は下記の通りです。
- 売上高 9900億円→1兆300億円
- 営業利益 440億円→740億円
- 経常利益 410億円→630億円
- 当期純利益 300億円→460億円
- EPS 163.89円→251.30円
すべての項目で数値が上振れています。
マーケットコンセンサスも大幅に上回りました。
これを受けて、翌日の株価は10%超上昇しました。
なぜこのような結果になったのでしょう?
その理由を知るために、決算資料を読み解きます。
それによって、電源開発と東京電力や関西電力など他の電力会社との違いが見えてきました。
では早速!
決算資料には通期業績予想修正の理由について、次のように説明されています。
2022年3月期の業績予想については、卸電力取引市場価格の上昇等による電気事業の火力での売上高の増加を見込む一方、火力の燃料費の減少等を見込むことから、2021年10月29日に公表した2022年3月期の業績予想値より増収増益となる見通しです。
「卸電力取引市場価格の上昇」が要因で売上高が増加したとあります。
卸電力、つまり電力の卸売とはなにか?
それは、電源開発が旧一般電気事業者等やJEPX(日本卸電力取引所)に電力販売することを指します(下図参照)。
旧一般電気事業者は東京電力や関西電力の小売部門、JEPXは電力自由化が進められるなかで設立された電力を売買する市場のことです。
需要家は一般家庭や企業のことです。
ここから分かることは、電源開発は東京電力や関西電力などの電力会社に電気を売っている立場だということです。
これが電源開発と他の電力会社との事業内容の大きな違いです。
「卸電力取引市場価格の上昇」は、電源開発が電力販売しているJEPXでの取引価格が上昇したということです。
販売する電力の価格が上昇して高値で売ることができたため、売上も大幅に伸びたということですね。
JEPXでの価格上昇は2021年後半から始まりました。
これは電力需給逼迫が原因ですが、背景には天然ガスの供給不足があります。
日本の電力の約40%が天然ガスで発電されています。天然ガスはすべて輸入でまかなわれており、コロナによるサプライチェーンの混乱などで輸入が滞りました。
天然ガス不足による電力供給不足→卸電力取引市場での価格上昇→市場で電力を売っている電源開発の売上げ増加、が今回の決算で上方修正という形で反映されたと言えます。
逆に言えば、今後天然ガスの輸入が正常化し、取引所での価格も落ち着けば、電源開発にとって有利な環境も変化すると思われます。
しかし、ロシアとウクライナの戦争で天然ガスを含む資源価格は上昇しており、しばらくこの傾向が変わることはなさそうです。